2015年07月30日 19:53

オルヴェウス・いじめ防止プログラム

ひとつ前の記事ではフィンランドの教育に関する本を取り上げましたが、今回はノルウェーはベルゲン大学健康促進センター(HEMIL)心理学教授であるダン・オルヴェウス博士らが開発したいじめ防止プログラムについて書かれた本を紹介します。









オルヴェウス博士は35年以上に渡りいじめを調査、研究をしてきました。
それらの研究をベースに開発されたプログラムはオルヴェウス・いじめ防止プログラムと呼ばれ、EU、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど世界20ヶ国以上で導入され実績を上げています。

わたしたちが認知していないたくさんの有益な情報が書かれており、これらを知らずして、実行せずして、いじめは防げないと白旗を上げるのはたいへんもったいないなと思いました。
しかし同時に、日本でこのプログラムを導入するのはなかなか難しいとも。
なぜならば無理解ゆえに、そして使命感の無さゆえに、制度的改革を嫌い邪魔をする人たちが我が国にはたぶん多いからです。





オルヴェウス・いじめ防止プログラムの原則の一つ目は、教師や大人は、思いやりのある積極的な関心と関与を持つこと、だそうです。
具体的には子どもを充分に知る時間をとること、課題をよく見てあげること、プライベートな生活に関心を持つこと、敬意をもって子どもたちに接すること、子どもたちのほめ方をみつけておくこと。
もうひとつの原則は、大人は信頼できる積極的な役割を果たすモデルとなること、です。

教育界は、そして日本社会は、まずこの大原則を守ることができていないように思えます。
プログラムが導入されて成果を上げている国々の学校や社会では、この原則をクリアできたわけですが、日本ではどうでしょうか?
オルヴェウス博士は関わるスタッフのトレーニングが重要であると説きます。
それは教員だけではありません。
保護者、そして地域の人々がトレーニングを受けない限り成果は得られないのです。





ここでいじめの定義についての話を。
適切に運営されている学区の教育政策についてオルヴェウス博士は、良い対策の要素とは、次の諸項目を含んでいると述べています。

・いじめのはっきりとした定義
・防止に焦点を合わせていること
・いじめ問題が起きたときに行われる保護者との協働の手続き
(他にも要素はありましたが一部を抜粋。)


オルヴェウス博士が言うように、いじめの定義がはっきりしていないといじめ防止プログラムはうまく機能しません。
しかし日本の文科省や自治体のいじめの定義はいまだ不完全なままで、それが残念でなりません。
そのことについては既に多くの教育関係者が指摘していますし、この本の中でも翻訳者が冒頭で触れつつ、オルヴェウス博士らによる世界標準の定義を紹介しています。
日本は、まずスタートラインにおける初歩的間違いを正す必要があると痛感します。



オルヴェウス博士は、

「ある人が、繰り返し、長期にわたり一人、または複数の人によって拒否的行動にさらされるばあい、その人はいじめられているのです。この結果、その人は相手から自分を守ることが難しくなります。」


とし、いじめの定義は三つの主要な概念から成り立つと言います。

ひとつめは、相手が欲しない拒否的行動に関わる攻撃的な行動。
ふたつめは、いじめは典型的に繰り返し、継続的であるという行動のパターン。
みっつめは、当事者間には力もしくは強さのアンバランスが存在すること。

なのだそうです。

文科省や自治体の定義になぜか欠けるのはふたつめの要素です。

何日か前に紹介した「いじめと向き合う」という本にも、

暴力の反復継続という視点を見失ってはいけない。
いじめの特性は標的が特定された暴力の反復継続にある。

と書いてありましたが、文科省の定義にはその視点がありません。
我が国がいじめ対策における大事な視点のひとつをあらかじめ見失っていることがわかります。
盛岡矢巾町の少年の件も、そのことと無縁ではないはずです。




*参考
豊田市いじめ防止基本方針
http://www.city.toyota.aichi.jp/s/_res/projects/default_project/_page_/001/008/331/01honpen.pdf


































































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Posted by hyakuyobako