2018年09月02日 22:26

『いじめに大人はどう向き合うか』昨年9月の間宮静香弁護士のお話より





僕らがリスペクトしてやまない間宮静香弁護士の、昨年9月の講演(80分)をメモしたものをFacebook再投稿しましたので、こちらのブログにも転載します。

https://www.facebook.com/100010223203361/posts/502779926739443/


いじられキャラ
うざい・きもい・死ね
孤立化・無力化・透明化
被害者・加害者・観衆・傍観者
心のコップにたまる水

今夜は『いじめに大人はどう向きあうか』と題された講演を拝聴しました。
上記はお話の中で登場したキーワードの一部です。

講師は弁護士の間宮静香さん。
http://www.midori-olive-law.com/sp/staff/index.html#staff1
とよた子どもの権利相談室の代表擁護委員であり、愛知県弁護士会子どもの権利委員会副委員長をされています。

お話を聴くのは3回目ですが、今回もたいへん学び多き素晴らしい内容でしたので、走り書きしたメモからここに転記します。^ ^
(間宮さんのセリフは一字一句正確ではありませんのでご容赦ください。)

約80分間の講演でした。
そのほぼすべてを書きました。
長いのでお時間あるときに読んでくださいね。

特に後半は、大人ができることについてかなり具体的に言及されていましたので、読み応えがあると思います。

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冒頭、間宮さんは、こんな風におっしゃいました。

「虐待されたときと同じぐらいの深い心の傷を、いじめで負うこともあります。」

「いじめられないためにいじめる側にまわる子もいます。」

そして、僕らがいじめについて抱くイメージと現実とのギャップについて、分かりやすい例を挙げて話してくださいました。
(このエピソードはのちに、僕らの心に突き刺さることになります。)

◯いじめのイメージ

中学二年生のA君とB君。

二人は一年生のときに同じクラスでしたが、特にトラブルなく過ごしました。

二年生も同じクラスになりましたが、悪気なく人が嫌がることをつい言ったりしてしまうタイプのB君は、成績優秀で優等生タイプのA君にちょっかいを出すようになりました。

B君はA君の筆箱をとって逃げたり、後ろの席にいるA君のノートに落書きをしたりしていました。

間宮さんは問いました。
これは、いじめと呼べるかどうか?

僕はいじめの可能性があると思い「いじめだと思う人は手を挙げてくださいませんか?」と訊かれて、挙手しました。

間宮さんはおっしゃいました。

「A君の方がB君の筆箱を奪って走る姿を目撃した子どももいたようですが、実際はいつもA君の筆箱がB君にとられていました。

休み時間ごとに、B君は筆箱をとって逃げていたそうです。

A君は毎回「やめて!」と言いながら、逃げ回るB君を必死に追いかけていました。

(ある日A君がB君の筆箱をとったのは、先にB君が筆箱をとったのでやむなくB君の筆箱をとり、自分の筆箱と交換するよう取引をもちかけるためでした。)

A君の認識は、"いじめられている"、で、気持ちは"辛い"、というもの。
かたやB君の認識は、"遊んでいる"、で、気持ちは"楽しい"、だったのです。

・人数や立場が同じで、やったりやられたりと立場が入れ替わっていない

・両方が傷つくわけでなく片方だけが傷ついている

・やめるか続けるかを、両方が決めることができない(片方しか決められない)

上記の関係性で反復継続していたら、いじめが深刻化しているため第三者が介入する必要があると見て良いでしょう。

A君とB君はそんな状況に陥っていたようでした。
しかし周りの目にはそんな風には映っていませんでした。」

間宮さんは続けておっしゃいました。

・現実のいじめは、誰でもわかる"THE・いじめ"みたいなものではない。

・子ども同士のコミュニケーション不全によるものが多数。

・気がつかないうちにいじめているケースもある。

・いじめかどうか事実認定するのは弁護士などの専門家でもたいへん難しい。
法律の世界、裁判ですら、一審、二審で認定が変わる、ひっくり返る。

・いじめ対策推進法は、子ども関係の事件を扱う弁護士には不評。
加害者と被害者の立場を固定しすぎているから。

・いじめる子ども、加害行為をする子どもには、抱えている問題がある。

・傷ついている子どもを助けることの方が、"いじめを認定"することよりも、とにかくまず優先されるべき。
そして、傷つけている側の子どもは心の中にどんな問題を抱えているのか?それを掴んで対応することの方が、"いじめを認定"することよりも、とにかくまず優先されるべき。

・いじめ行為をしないために子どもは、気持ちの整理、表出方法を学ぶ必要がある。

(前述のいじめ事例のA君は、のちに自分の命を絶ったそうです。)

間宮さんは次に、周りの人が気がつかないうちにいじめが深化してしまう際に登場しがちなキャラクターについて言及されました。

「『いじられキャラ』って聞いたことがありますか?私が嫌いな言葉です。なぜなら、本人の自発的なキャラクターじゃないからです。自分のコンディションに関わらずそういうキャラクター扱いをされてしまうからです。

いじめていた側の子どもは大抵『あの子はいじられて喜んでいたはず』とか『いやだったら一緒に遊ばないだろう。』『いやだったらここに来ないだろう。』と言いますが、中には、お家の環境が良くなかったからやむなく訪れていた子もいます。
自分のお家が嫌だったから、それよりもマシな場所にやむなく来て、嫌なことをされていても笑っていたのです。

学校の先生の中にも、いじられキャラというものを容認している人がいます。
そうした先生はいじめを見逃します。」

また、間宮さんは『うざい』『きもい』『死ね』についても言及されました。

ある学校では、『うざい』『きもい』『死ね』は日常的によく聞かれる言葉だったそうです。
そこで働くある先生は、赴任したときはかなり抵抗感があったそうですが、毎日聞かされるうちに次第に慣れてきて、『うざい』『きもい』『死ね』を「いつの間にか何とも思わなくなった」と語ったそうです。

『うざい』『きもい』『死ね』は相手の存在価値を否定する言葉であり、かつ、言っている本人がどういう気持ちで言っているのかわからないまま発する言葉であり、コミュニケーション能力を低下させている言葉、自分の感情を認識することができなくなる言葉だから、子どもに使わせてはいけない、と間宮さんはおっしゃいました。

また、『うざい』『きもい』『死ね』を繰り返すだけでは気持ちは相手に伝わらず、何のメリットもない悪循環が続くだけ、ともおっしゃいました。

そして、「『うざい』『きもい』『死ね』は先生方や親御さんも使う日常語になっているケースがあります。
大人が使えば、子どもも使いますよね?

繰り返しますが、『うざい』『きもい』『死ね』は相手の存在を否定する言葉です。子どもへの影響はたいへん大きいです。」とも。

ここから間宮さんは、お仕事で出会う虐待を受け続けた子どもたちのことを話し始めました。

間宮さんいわく、肉体を痛めつけられていた子どもは他人の肉体を傷つけるようになってしまう傾向はあるが、大人が寄り添い適切に接した場合、立ち直る力が意外にあるそうです。
しかし、ネグレクト(育児放棄)や存在価値を否定される心的虐待を受けてきた子どもは、予後が良くないそうです。

◯なぜいじめは見過ごされるのか?

お話は核心に近づいていきます。

間宮さんは『なぜいじめは見過ごされるのか?』というテーマで語り始めました。

そして、逆にどういう人がいじめを見過ごさないかについて話してくださいました。

間宮さんは
「いじめを見過ごさなかった子どもたちに『なぜあなたはそんなによく見ていたのですか?」と質問したら、その子達は「(過去に)自分自身がいじめられた経験があるから」と答えたそうです。

つまり、いじめは見ようとしないと見えないもの、感度をあげて見ようとしないと見えないもの、なんです。」とおっしゃいました。

いじめの進行には三段階あるそうです。

それは、

孤立化

無力化

透明化

の三つ。

各段階で起こりがちなことは、次の通りです。

まず孤立化の段階では、加害行為をしている子どもは、いじめている子どもの"悪いところ"を親御さんや先生方に訴えて共感を得ようとするそうです。

それに対して「そうなんだ、ならば確かにA君にも悪いところがあるね。」と大人が述べてそれで終わりにしてしまうと、加害行為をしている子どもをアシストすることになるそうです。

無力化の段階では、「助けて」と言えません。
孤立化によりひとりぼっちになり、力がどんどんなくなるから。

そしてついに透明化が始まります。

ヒトは、意識していないと嫌なことは脳が見えないようにしてしまうのだそうです。
(透明化の恐ろしさの最たる例として、中野富士見中学の"葬式ごっこ"いじめ事件を挙げられました。)

『親御さんや先生は「自分も被害者が見えなくなってしまうかもしれない。」と常に意識して見続けなければいけないと思います』とおっしゃいました。

続いて、いじめの4層構造について解説されました。

同心円が示され、真ん中にある小さな円が被害者、その周りを取り巻く円が加害者、その周りを取り巻く円が観衆、さらにその周りを取り巻く他の円よりも大きな円が傍観者、と書かれていました。

間宮さんは

・被害者から見たら、三者は一緒くたの存在でしかない。

・いじめに対応する学校が、被害者、加害者の二者だけにフォーカスするのみだと、いじめの深刻度が増す。

・実は一番力を入れるべきなのは、傍観者への取り組みである。傍観者が感度を上げられるような取り組みである。

とおっしゃいました。

(ちなみに北欧の研究では、小学生時代に傍観者だった子どもが中高生になると仲裁者になる子どもが増えるため、傍観者が減るそうです。
しかし日本の子どもは北欧の子どもと違い、小学生時代の方が仲裁者が多く、年齢を重ねるに従い傍観者が増えてしまうそうです。
悲しいですね。。。)

◯どうしていじめてしまうのか?

・人は目に見えないコップを持っていて、嫌なことがあると水がたまり、その水がいよいよ溢れると、自分を傷つけたり、人を傷つけたりする。

・いじめる側の子どもの心にあるコップに溢れている水を取り除かない限り、いじめは解決しない。根本解決に至らない。

・ひとりじゃないと思わせる触れ合いをするだけで、コップの水が減る。大人に否定されてきた子ども、大人不信の子どもの目の形は三角。しかし次第に丸になる。

・加害者の子どもに寄り添う対策をしていこう。加害者のケアもしっかりしていこう。

◯大人には何ができるか?

"いじめる子にしないために"
間宮さんはおっしゃいました。

・コップの水を溜めないために、子どものありのままを認めよう。「大好きなんだよ」と言葉がけしたり、ハグしたり。

・ありのままの自分を認めてもらえると自己肯定感が高まる。
長年、条件付きの愛でしか愛してもらえなかった子どもはなかなか回復しない。

・いじめについて子どもと一緒に考えよう。子どもたちは答えを持っていることがある。

・『うざい』『きもい』『死ね』を言い換えよう。気持ちの伝え方をや問題解決方法を一緒に学ぼう。相手に「嫌だ」という気持ちをどう伝えるか?を一緒に学ぼう。
(子どもは大人の伝え方を真似てしまうから、どうしたら良いのか、大人も一緒に考えよう。)

・家庭の力は大きい。
しかし。
信用できる大人、信頼できる大人との出会いが子どもの力になる。
家庭環境が良くない子どもたちの中で「そういう大人が近くにいる。」と答える子どもがいる。「誰?」と訊いたときの、最も多い答えは「学校の先生。」
子どもたちは言う。
「先生が昼ごはんを用意してくれた。」
「先生は責めないで話を聞いてくれた。」

・親以外の大人は家庭には入れないが、自らが子どもに"まともなロールモデル"をしめすことが大事。
しかしすぐには子どもは変われない。
一年や二年では無理な場合も多い。
「どうか十年後にこの子が幸せを感じられるように」「十年後に幸せになればいい」と願ってケアするしかない。
すごく時間はかかるが、あなたのことを想っていると示すことが大事。

・怒りのコントロール法
6秒ルール、怒りの点数化、「べき」→許容範囲を広げる。

"いじめが具体化していない時期に"

・いじめで最悪な結果を招かないために、子どもが安心して過ごせる居場所(家庭、学校以外の第三の場所)を確保することを意識する。

・家の中で、兄弟姉妹に邪魔されない、ケアしたい子どものプライバシーを確保して話ができる場所や時間の定型化を。

・子どもが直接いじめに関わっていないが、いじめがありそうな場合は、子どもが何ができるかを子どもと一緒に考えよう。
親と先生はいじめに対して傍観者になってはいけないし、傍観者になっていない姿勢を子どもに示して、その後、子どもを見守ろう。
ただし、子どもの了解を得ずに大人が動いてはいけない。子ども同士の世界があるから。

・重大事例は、先生が傍観者になってしまっているケースが多い。

・子どもがいじめをしてしまっていると懸念される場合、問題行動はSOSの裏返しだと気づこう。
「困った行動をしている人は困っている人」
「その子が困っていることは何か?を探そう。
家族、学校との関わり方を含め、困っていることはないか振り返る。」

・"いじめ"という言葉に過敏に反応しない。子どもは成長中であり、子ども同士のいざこざはコミニュケーションの学びの機会。
ただし「いじめという方法は間違っている。許さない。」という毅然とした態度で対応する。

"子どもがいじめをしていると疑われる場合"

・相手の子とのトラブルが疑われる場合
「嫌だった」気持ちを受けとめる。
いじめ以外の方法を具体的に探す。
相手の子への対応を考える。
(これらのときに、相手の子の悪口を大人は言ってはならない。)

・相手の子とのトラブルがない場合
何が子どもの心を圧迫しているのかを、子どものことを認めつつ、一緒に考えよう。

"いじめられたと疑われた場合"

・保護者が感情的にならない。子どもを安定させるには親が安定すること。(親の怒りが収まらないから子どもがやむなく付き合うケースがある。)

・子どもの意思を尊重する。
弁護士が保護者の意思と子どもの意思を別々に訊くと、両者には結構ズレがある。
子どもの気持ちがいちばん大事。(親に巻き込まれると子どもの傷つきが酷くなる。)

・いじめの原因探しをしない。(自分が悪いからいじめられた、という気持ちをいだかせてしまう)

・子どもの気持ちを受け止め、安心して過ごせる場所を確保する。

・不登校を怖れない。ドーンと構える。焦らない。

"長期化する必要がないのに長期化する場合"

・親が子どもに「(相手方が)許せない!」「いじめだ!」とどんどん刷り込む場合。

・学校の初動が失敗する場合
ボタンの掛け違いが起こるのは、親はかなり悩んでから相談しに来ていることに対する想像力に欠ける対応がきっかけ。

"学校とともに解決する"

・感情的にならない。

・把握している事実を正確に伝える。

・不安なことも伝える。

・共に解決することを忘れない。

・返事が欲しいということを明確にする。

・早く対応してほしいことは希望の期限を正確に伝える。

"保護者とともに解決する"

・保護者の気持ちに寄り添い受容する。

・期限を区切る。親はそこまでは待てる。

・こまめに連絡する。
「伝えなくてもわかるだろう。」→こういうテクニカルなミスからよく揉める。
・子どもの将来を見据える。子どもの気持ちを中心に考える。

間宮さんは最後におっしゃいました。

「子どもが解決する力を持っていることを忘れないでください。知恵は子どもが持っています。大人は子どもと一緒に考えなければ。」



































































































Posted by hyakuyobako